上ホロカメットク山で雪崩事故(11/27追記)

北海道十勝岳山系の上ホロカメットク山にて雪崩事故がありました。
メディアで速報された内容を簡略的に整理致しました。
速報ですので、内容は今後変わる可能性がありますことをご理解ください。

発生: 2007年11月13日11時45分頃
場所: 上ホロカメットク山(1920m) 安政火口付近 (地図)十勝岳北西
遭遇: 男女2名パーティの内、男性が流される
救助: 女性が男性を掘り出し、119番通報。
     道警ヘリコプターにて救助。外傷等なし。

ソース:
北海道新聞共同通信HBCHTB

 
 

(2007年11月27日追記)
雪氷学会北海道支部が結成した雪氷災害調査チームによって、上ホロカメトック山で2007年11月13日に発生したインシデントの調査が行われ、その内容の概略がサイトにて「十勝連峰の雪は不安定 入山者は注意を!」という記事として掲載されていますので、お知らせ致します。なお、この報告を読まれるにあたり、スラブについての基礎的な知識が必要と思われますので、以下に簡略的なノートを作成致しました。参考にして頂ければ幸いです。


ノート: スラブについて
ある厚みがあり、水平方向に広がる板状の性格を持った雪を「スラブ」といいます。スラブには複数の層が含まれていることもありますし、単一の層で形成されていることもあります。このスラブが雪崩れますと、日本では「面発生雪崩」と呼び、英語では「Slab Avalanche」と表現します。

降雪直後の結束性のない雪粒も、時間経過と供に雪粒同士が結合することで、徐々にスラブを形成していきます。また一方で強風を伴う吹雪では、細かい雪粒によってスラブが短時間で形成されることもあります。特に風に起因する固いスラブをウインドスラブと呼びます。

スラブは、厚さや硬さそして空間的な広がりなどに多様性があります。雪崩業務に携わる人の間では、スラブの硬さについて便宜的に「ソフトスラブ」と「ハードスラブ」に分類します。たとえば爆発物で雪崩コントロールを行う場合、結束性のない雪で構成される(つまりまだスラブの性格を持っていない)積雪ですと、その効果は限定的なものとなりますし、また一方で、ハードスラブの場合は、コントロールが難しくなる面を持つからです。

結束性のない雪が多量に降り、さらに斜度が十分にあれば樹林帯でも雪崩が起こります。しかし、積雪がスラブの性格を持ち始めると、樹林帯での雪崩発生リスクは下がっていきます。ちょうど樹木がスラブを支えるような効果を生むためです。重要なことは、雪の結束性の変化は漸次的であり、それをある段階にて、人間が便宜的にソフトとハードに区分しているに過ぎない、ということです。


強風に曝される機会の多い山岳域では、地形と風の相互作用により、局所的なウインドスラブをはじめとするハードスラブがよく形成されます。それゆえ、誘発による雪崩事故も起こっています。

たとえば2007年4月15日の針ノ木岳マヤクボ沢や数年前にあった北アルプスで登山者2名が下山中に流された雪崩事故は、いずれも尾根付近に形成された局所的なウインドスラブによるものです。また、大きく報道されたものでは、2000年の八方尾根ガラガラ沢の雪崩事故もハードスラブが関与したものになります。この事故は、風の削剥を受ける積雪深が浅い場所にできたハードスラブが崩壊し、雪崩が発生しています。さらにヨーロッパでは、アンザイレンをした登山者5人が、わずか車一台分の大きさのウインドスラブを壊したことで、一緒に流され、大けがを負う……といった事例などもあります。

山岳で活動する人にとって、降雪がスラブを形成し始めているのか否か、また積雪がどのようなスラブによって構成されているのかをよく観察することが、リスクマネジメントをする上でとても大切になります。