STEP 3 訓練をする

雪崩を学ぶ

雪崩の状況判断に係るスキルは現場経験を通してでしか学べません。しかし、雪山に入る前に、その基礎を理解しておくことは安全に役立ちます。

私たちは「雪崩れるのか・雪崩れないのか」といったYes or Noの答えを求める傾向にありますが、現場で把握できることは多くの場合「おおむね・・・の傾向にあるようだ」と曖昧さを含むものになります。それゆえ、枝葉に惑わされず、より重要な幹を理解する必要があります。

雪崩を大きな樹木に例えれば、雪粒の話は葉であり、太い幹は地形です。木を理解する上で葉は大切ですが、より重要度が高いのは幹となる地形理解です。

「留意すべき雪崩」の特徴

雪崩にも個性があり、それを知ることが大事です。雪崩には、人の刺激程度で誘発する不安定性が短い期間で解消するものと、長い期間継続するものがあります。「短期間」とは数時間から4~5日程度を指し、「長期間」とは一週間から二ヶ月程度です。

短期間の不安定性による雪崩には、まとまった降雪による「ストームスラブ」、風で移動した雪で形成する「ウインドスラブ」、結合力の弱い雪による「点発生雪崩」などがあります。これらの雪崩は、降雪や風など気象現象と直結しており、積雪表層に形成されるため、経験を積むことで、その危険性を比較的見抜いていきやすいタイプです。

不安定性が長期間継続する雪崩には、降雪後、雪が結合力の弱いものに変化することで生じる「持続型スラブ」、その結合力の弱い雪が積雪の深い位置にある「ディープスラブ」などの雪崩があります。いずれも取り扱いが難しく、山岳ガイドのようなプロでも犠牲となっています。

持続型スラブは、特定の標高や方位など、限定的な場所に形成することが多く、その存在の把握が難しくなるのと同時に、不安定性の評価も難しい雪崩です。ディープスラブは、持続型スラブをさらに厄介にしたタイプです。弱い雪が積雪の深い位置にありますので、誘発の可能性は低いのですが、一旦、雪崩が発生した場合、とても大きな雪崩になる傾向があります。

地形選択と気象変化が安全に与える影響

降雪は、地形と風の相互作用で斜面に積もる際に多様性を持ちます。あるところでは厚く積り、あるところでは薄くなり、また、あるところでは密度の高い硬い層を形成し、あるところでは極めて軟らかい状態にあります。このようにして積もった雪は、その後の気温や風、日射、さらなる降雪や降雨といった気象現象の影響で変化を重ね、複雑さを持つようになります。

雪山では、ある斜面はとても不安定で雪崩を簡単に誘発するものの、別の斜面では比較的安定しており、安全に行動できる日がしばしばあります。つまり、雪崩対策で最も重要なことは、地形を注意深く観察し、そこに堆積している雪は、どのような気象現象の影響を受け、どのような傾向や特徴を持つ可能性があるのかを見抜くことです。

積雪の強度のバラツキを「積雪の空間的多様性」と呼び、多くの雪崩事故の原因となっています。空間的多様性の理解には、時間を掛けたフィールド経験と順序立てた学びが必要です。そして、そのリスクマネジメントは地形選択が鍵となるのです。

グループとしての賢い行動

雪崩事故の発生の可能性を下げる、あるいは、もし事故が起きたとしても、その被害を小さくするために、グループとしてどのように行動するのかは極めて重要です。雪崩地形を認識し、積雪状態とその多様性を考慮しながら、適切なルート設定を行い、さらに仲間をどのように動かすのかを考えるのです。

原則的な行動様式を事前に学び、グループメンバーの間で共通理解としておくことは、実際の現場での行動様式の適応を助けます。それは安全だけではなく、時間ロスのないスムーズな移動にも役立ちます。

捜索救助

経験豊富な人であれ、浅い人であれ、誰でも雪崩事故を起こす可能性があります。それゆえ装備を所持するだけでなく、捜索救助の訓練をしておく必要があります。雪崩死者データは、そのスポーツの「熱心なユーザー」であることを示しています。つまり、今、この文章を読んでいるあなた自身が当事者になる可能性が高いということを理解してください。

冬が始まる頃、雪上でなくて構いませんので、仲間と集まって雪崩ビーコンの練習をしてください。新しい電池を入れるキッカケになりますし、初心者は機器に慣れ、経験者は操作感覚を思い出す良い機会になります。

シーズン中は、雪崩ビーコンを雪に埋めての練習をしてください。最低でも70cm程度の深さにビーコンを一個埋め、それが素早く探せることが最初の目標です。プローブを使って位置特定をするまでの流れを練習してください。埋めたビーコンを壊さないようにプラスチックのプレートなどで保護することを忘れないように。

山の技術を学ぶ

雪崩対策だけでなく、雪山で安全に行動するための技術も学ぶようにしてください。山岳ガイドによる各種講習会もありますし、長野県山岳総合センターのように年間を通して包括的な山岳訓練を一般の雪山利用者対象に実施している行政機関もあります。

身を守る技術と知識

トラブルが発生した際、低温と風雪から身を守り、一時的な退避ができる技術は重要です。仲間が怪我をして救助隊を待つ間、どのような対処が良いのか、あるいは道迷いに陥った際、雪洞などを使って一晩のビバークができるスキルがあれば、慌てて行動し、さらなるミスを重ねる可能性を下げることもできます。

体力

雪山はなにしろ体力が必要です。夏山よりも装備は重くなりがちですし、身軽なゲレンデ内の滑走とは異なります。また、深雪でのスノーシューは滑走者のシール登行よりも体力を要します。日頃から負荷を掛けた運動を行い、フィットネスを整えておいてください。

雪質に影響されない滑走スキル

コンディションに左右されず、安定して滑走できる「強い滑り」が必要です。バックカントリーで大事なことは「転ばない」です。転倒は滑落や怪我、装備の破損など、さまざまなトラブルを引き寄せます。余裕のあるスピードでの安定した滑走を心掛けてください。

応急処置を学ぶ

怪我を負った際などの基礎的な対応を事前に学び、練習しておくことは大切です。以前に比べ、多様なファーストエイドを学ぶ機会が増えていますので、専門講習を受けてください。