観察と記録のガイドライン

このガイドラインは、ある安全対策を実施するにあたって、どのような、または、いかなる観察をするべきかについて述べたものではありません。これらの用語、方法、技術、記号などを用いることによって、正確な観察記録の作成を行い、各地で行われている雪崩に関する多様な安全対策の情報交換を容易にしようというのがJANの意図するところです。
 スキーテスト、プローブやスキーポールを使ったテストなど、他にも方法は多数ありますが、それらのいくつかは標準化が難しいため、ガイドラインとして整備されていないものもあります。しかし、それぞれの手段は必要に応じて実践されています。
 
 
日付
年、月、日を記録します。それぞれの数値に間にはスペース、コンマなどを入れません。例:2004年12月1日は041201と記載します。
 
時刻
観察時刻を24時間スケールで記録します。それぞれの数値に間にはスペース、コンマなどを入れません。例:午後4時20分は1620と記録します。
 
天気
空を覆う雲量を観察しシンボルマークで記入します。日本の天気予報で「快晴」は雲量1以下、「晴れ」は雲量2以上8以下、「曇り」は雲量9以上になります。薄雲に覆われている場合は、下記マークにダッシュ(-)をつけます。観察地点より下部にある霧・雲はVFと記録し、その最上部の標高を50m単位で推定し記録します。
 
雲量0-1(Clear) CLR 
雲量2-3(Few) FEW 
雲量4-5(Scattered) SCT 
雲量6-8(Broken) BKN 
雲量9-10(Overcast) OVC 
不明(Obscured) X 
 
 
降水の種類・強度
種類
降水なし(No precipitation) Nil
雨(Rain) R
雪(Snow) S
みぞれ(Mixed Rain and Snow) RS
あられ・ひょう(Graupel and Hail) G
凍雨(Freezing Rain) ZR
 
強度・時間降雪深
S-1 1cm未満
S1  1cm
S2  2cm
S3  3cm
S10 10cm
 
降雨
小雨(Very light rain) RV
弱い雨(Light rain) RL
中程度の雨(Moderate rain) RM
強い雨(Heavy rain) RH
 
 
 

静穏(Calm)  空気の移動なし(0m/s) C
弱風(Light)  旗や小枝が揺れる(1-7m/s) L
軽風(Moderate) 小樹木が揺れ、旗が伸び、雪が移動し始める(8-11m/s) M
強風(Strong) あらゆる樹木が揺れ、雪が移動する(12-17m/s) S
暴風(Extreme) それ以上(17m/s以上) X
 
 
風向
8方位で記入します。風向が定まらない時はVRBと記入します。
N NE E SE S SW W NW
 
 
尾根上の飛雪
Nil 吹雪なし
Prev 前回の観察以降、飛雪があったと思われるが現時点ではない
M ある程度認められる(Moderate)
I 激しい飛雪が認められる(Intense)
U 観測不能(Unknown)
 
 
降雪深
降雪板に積もった降雪を数ヶ所で計り、平均値を記録します。
 
中間降雪板(interval board: HIN) 定時観測より短い期間での観測に使用
日2回降雪板(twice-a-day board: H2D) 定時での日2回の観測に使用
24時間降雪板(new snow board: HN24) 過去24時間の降雪の深さの観測に使用
一降雪期間降雪板(storm board: HST) 一つの降雪期間の降雪深を観測に使用
 
積雪深(HS)
総積雪の深さです。
 
靴底貫入法(Foot Penetration)
乱されていない雪面に片足を踏み込み、徐々に全体重を掛けて貫入させていきます。止まったところで足を抜き、雪面からの深さを計測します。5cm以下は1cm単位で、それ以上は5cm単位で記録します。現場の略称:フットペン。
 
 
雪質
国際分類であるThe International Classification for Seasonal Snow on the Ground(IACS 2008)に従っての雪粒の形態と大きさを記録します。なお雪粒に雲粒(ライム)が付いている場合は、記号の右下に「r」を書くなど、一部で修正し使用しています。
 
新雪(New snow)  PP 
こしまり雪(Decomposing)  DF 
しまり雪(Rounded Grains)  RG 
こしもざらめ雪(Faceted)  FC 
しもざらめ雪(Depth Hoar)  DH 
ざらめ雪(Melt Forms)  MF 
表面霜(Surface Hoar)  SH 
氷板(Ice Forms)  IF 
あられ(Graupel)  PPgp 
融解凍結クラスト(Melt-freeze crust)  MFcr 
 
 
粒度
クリスタルスクリーンの升目を参考にして、それぞれの層の雪粒の大きさを記録してください。大部分を占める雪粒の長径の平均を記録し、2つの異なった大きさの粒が混在する場合はスラッシュ(/)を用い、ばらつきがある場合はハイフン(-)を使って記録します。例:0.3/2.5、0.5-1.5、0.5-1.0/2.5
 
 
含水率
雪をそっと握ってみて、その様子から記録します。
 
ドライ(Dry) 圧力を掛けても粘着しあう傾向がない。
モイスト(Moist) 10倍ルーペで見ても水は確認できない。雪はくっつき合う傾向。
ウェット(Wet) 10倍ルーペで見ると水が確認できるが、握っても水はでてこない。
ベリーウェット(Very Wet) 水が滲みでてくる。
スラッシュ(Slush) 水浸し状態。
 
 
硬度
それぞれの層をハンドテストで硬度を観察します。手袋を付けた状態で、層に対して垂直にやさしく押します。
 
F 手袋をつけたこぶし
4F 手袋をつけた指4本
1F 手袋をつけた指1本
P 鉛筆の削っていない側
K ナイフ
I 氷
 
 
ショベルシアーテスト(Shovel Shear Test)
四角柱(幅25cm×奥行35cm)を作り、ショベルを斜面に沿って手前に引くことで、弱層の位置を確認します。テストの際は、四角柱上部の柔らかい雪(F~4F)を全て取り除きます。後部の切れ目は深さ70cmを超えないようにします。
 
STV 四角柱を作成中あるいはショベルを差し込む時に剪断した(Very easy)
STE 最小の力を加えただけで剪断した(Easy)
STM 中程度の力を加えた時に剪断した(Moderate)
STH 強い力を加えた時に剪断した(Hard)
STC 四角柱が折れた(Collapse)
STN 剪断は起きなかった(No Shear)
 
 
コンプレッションテスト(Compression Test)
四角柱(幅30cm×奥行30cm)を作り、ショベルのブレードを叩くことで、弱層を確認します。叩く際は各部の重みで叩くようにし、過度な力は加えないようにします。各回10回ずつ叩き、それを積算した数字をデータコードと共に記録します。
 
CTV 四角柱を切り出している最中に剪断する(Very easy)
CTE 手首を使い手のひらで叩くと剪断する(Easy)
CTM 肘から先を使い、こぶしで叩くと剪断する(Moderate)
CTH 腕全体を使い、こぶしで叩くと剪断する(Hard)
CTN 上記手段によっても剪断が起こらない(No Failure)
 
 
コンプレッションテストにおける破断の特徴区分
破断の特徴は、テスト結果を解釈する際に重要な要素となります。SPやSCの結果は特に留意すべき要素となります。
 
SP: Sudden Planar (サドン・プレナー/ポップ)
    ある一回のタップで綺麗に破断。回数は何回でもいい。ポンと出てくる。
SC: Sudden Collapse(サドン・コラプス/ドロップ)
    一回のタップで破断が雪柱に入り、顕著な層が垂直に落ちて潰れる。
PC: Progressive Compression(プログレッシブ・コンプレッション)
    通常1回のタップで破断し、それに引き続き、徐々に層はタップで圧縮される。
RP: Resistant Planar(レジスタント・プレナー)
    複数のタップで破断線が入る。破断はするが、抵抗感があり、前に出てこない。
B: Non-planar Break(ブレイク)
    破断面は形成されず、凸凹となる。
 
 
 
ルッチブロックテスト(Rutschblock Test)
ブロック(幅2m×奥行1.5m)を作り、上部に乗ることでテストします。
 
RB1 ブロックを作成中にブロックがスライドする。
RB2 スキーヤーが上部から近づき、ブロック上部(後面から35cm以内)にゆっくりと乗る。
RB3 スキーヤーは踵を上げず、膝を上下に屈伸することで下方に荷重を掛ける
RB4 スキーヤーはジャンプを行い、同じ場所に着地する。
RB5 再び、同じようにジャンプする。
RB6 固いあるいは厚いスラブの場合は、スキーを外し、同じ位置でジャンプする。柔らかいあるいは薄いスラブのためスキーを外すと、そのスラブを踏み抜いてしまう場合は、さらに35cm下方、ブロック中央に移動し、膝の屈伸による荷重をもう一度行った後、3度のジャンプを試みる。
RB7 以上のいかなる荷重を試みても斜面に平行で滑らかな剪断が起こらない。
 
 
雪崩の規模
堆積した雪から雪崩の破壊力を推定し、規模を表す数値を選定し記録します。走路の全長は目安であり、スラブの厚さなどから対象物が受けるダメージを考察し判断します。中間の数値(1.5など)も使用します。雪崩管理を行っても発生しなかった場合は「0」を記入します。
 
規模 潜在的破壊力・質量・走路全長
size 1 人間への危害はなし・<10t・10m
size 2 人が埋まったり、怪我をしたり、死ぬ可能性あり・10二乗t・100m
size 3 車を埋めたり、壊したり、小規模な建物を破壊したり、木々を追ったりする可能性あり・10三乗t・1000m
size 4 列車や大きなトラック、数棟の建物あるいは4haの森林を破壊する可能性あり・10四乗t・2000m
size 5 知りうる限りの最大の雪崩。村や40haの森林の破壊する可能性あり・10五乗t・3000m
 
 
雪崩の種類
雪崩の種類を記録します。デブリの状態からハードスラブか、ソフトスラブなのかを付記します。デブリの中にある雪塊やブロックなどから判断します。
 
点発生雪崩(Loose snow avalanche) L
面発生雪崩(Slab avalanche) S
不明(Unknown) U
乾雪(Dry snow) D
湿った雪(Moist snow) M
濡れた雪(Wet snow) W
 
 
トリガー(Trigger)
雪崩を発生させる「きっかけ」記録します。人的要因の場合は、それが故意(管理やテスト)なのか、意図しない偶発的なものなのかも記録します。
 
自然発生(Natural)
爆発物(Explosives)
スキーヤー・スノーボーダーなど(Skier etc.)
スノーモビル(Snowmobiles)
雪上車など(Over-snow Vehicle)
不明(Unknown)
その他(Other)
 
 
雪崩の発生位置(Start Location)
発生区上部(Top of Start Zone) T
発生区中間(Middle of Start Zone) M
発生区下部(Bottom of Start Zone) B
不明(Unknown) U
 
 
雪崩の滑り面(Bed Surface)
荒天の積雪(Storm Snow) S
旧積雪層内(Old Snow) O
地表(On Ground) G
不明(Unknown) U
 
 
末端
雪崩のデブリ先端が到達した位置を記録します。
 
発生区(Start Zone) SZ
走路(Track) TK
堆積区上部(Top Runout) TR
堆積区中間(Middle Runout) MR
堆積区下部(Bottom Runout) BR
不明(Unknown) U
 
アバランチパスが短く、発生区、走路、堆積区の区別ができない場合
パス上部(Top Path) TP
パス中間(Middle Path) MP
パス下部(Bottom Path) BP