JANマガジン

2020年02月18日

【vol.5】中学生不明の事案について

行方不明となるまでの行動(2/20追記)

2020年2月11日、谷川岳天神平スキー場(群馬県)にて中学生が一時行方不明となり、翌12日12時30分頃、無事発見に至る遭難事案がありました。行方不明発生時の行動について、報道等でははっきりしない箇所がありましたので、群馬県警察谷川岳警備隊に取材し、その概略が判明しましたので、お知らせ致します。
 
【行方不明となるまでの行動】
11日は荒天のため、ロープウェイ山頂駅前のゲレンデに掛かる峠リフトは運転を休止していました。中学生はゲレンデ内での新雪滑走をしようと、踏み跡のある「登山者出入り口」を通って天神尾根へ登行を行いました。父親はゲレンデで待機していました。親子はゲレンデ内での新雪滑走を撮影しようと、父親がゲレンデで待機、中学生は踏み跡のある「登山者出入り口」を通って天神尾根へ登行を行いました。

天神平スキー場が作成している地図


中学生は父親の待つゲレンデ方向へ「登山者出入り口に沿った斜面(2/20追記)」を滑り降りるつもりでしたが、天神尾根付近で風雪によるホワイアウトでルートロストし、ゲレンデと反対側の斜面へ滑り降りてしまいます。

親子は当初、トランシーバーにて交信をしていましたが、中学生がゲレンデと反対側の斜面に入った時点で通信が断絶します。さらに、こちら側の斜面は携帯電話もつながらなくなるため、以後、連絡が完全に取れなくなり、父親が12時45分頃、警察に行方不明を通報しました。

【遭難を考える上で重要なこと】
この事案は「スキー場利用者の遭難」であり、山スノーボード(バックカントリー滑走)での遭難ではありません。視界がとても悪い時、スキー場利用者が「意図せずにスキー場外に出てしまう事案」が時折発生します。その類型となります。

天神平スキー場では、登山者出入り口や天神尾根付近について、ゲレンデの境界がわかるように赤ポールとロープで明示する管理が日々、きちんとなされています。今回、中学生は登山者の踏み跡を使うことで、境界表示が視認できないルートに入ったことになります。

荒天時のルートロストは、雪山で長く活動している人であれば、誰でも一度は経験したことがあるような一般的な「エラー」の一つです。今回の事案が、どのようなタイプのエラーであるのかは、当事者から直接、お話を聞けていないので不明です。不明点について後知恵バイアスによる空想を巡らせ、遭難者を批評することは慎むべきです。

【安全対策に大切なこと】
雪崩の危険を啓発する際、最初に伝えることは「ゲレンデ境界の先は、それがたとえ1 m であっても、完全に別の世界」というものです。日本雪崩ネットワークでは「7 STEPS」でも、「ロープの向こう側」でも、それをお伝えしています。
 
【追記(2月20日)】
当事案の保護者とコンタクトが取れ、撮影が主目的ではなかったため、一部文章を修正しました。また、保護者から「荒天のため一時閉鎖されているゲレンデを滑走することは不適切な行為であるにも関わらず、息子に登って滑ることを許可してしまったことを反省しています」との言葉を頂きました。
 
スキー場は、安全な滑走環境を提供する事業を行うために、その「専有を許可された民間事業区域」となります。ディズニーランドにて、一時閉鎖している区域に立ち入る自由がないのと同様に、スキー場事業者が立入禁止あるいは一時閉鎖していく区域に入ることは不適切です。なお、登山者出入り口は、スキー場管理区域外となります。これは谷川岳への登山を楽しまれる方が多い場所柄もあり、ゲレンデ内を登山者が登ることで事故等が発生しないための措置となっています。
 
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