JANの雪崩情報は、山岳利用者の行動計画を補助することを目的に発表しています。このため情報には、どのような種類の雪崩が、どのような場所に存在し、どの程度の誘発可能性を持っているのかを、イラストを交えたわかりやすい形に整理して掲載しています。この情報は、雪崩の専門教育を受け、十分な訓練を経て身に付けた雪崩スキルを持つ現場実務者が、フィールドで観察された各種データを分析・評価したものです。また、状況に合わせたリスク軽減の行動を取っていただくことを目的に、そのコンディション下での「行動への助言」も付記されています。雪崩情報は、ユーザーに対し意志決定の材料を提供することで、雪崩事故発生率の低減および事故が発生した際の被害軽減に寄与することを目的としています。
JANの雪崩情報は、北米の雪崩専門機関から公報されているものと同一の標準化された雪崩情報です。これがJANで可能なのは、カナダの雪崩専門機関Canadian Avalanche Associationと提携し、長年、継続的に現役雪崩予報官を含む現場実務者を招聘しつつ専門教育の機会を設け、時間を掛けた人材育成と、情報共有システムを整備してきたことを背景としています。
『
CAAJournal_RisingSun_translated_2
』の記事
『日本雪崩ネットワークにおける雪崩情報発表への実践的アプローチ』
日本雪氷学会「雪氷」76巻6号451-460頁
使用データの量と質、不安定性の種類と空間的分布および時間的変化、事象の例外性、データを評価する人間の経験などの要素によって、情報の信頼度は変化します。発表される雪崩情報は、その信頼度を「high・moderate・low」で表現し、その理由も付記しています。また、この雪崩情報は、特定非営利法人日本雪崩ネットワークが発表する民間情報であり、気象庁から公報される「なだれ注意報」とは異なります。なお、欧米では、数日先までの予報を含む形態の雪崩情報が発表されていますが、日本では気象業務法に抵触することから、JANの雪崩情報は、現地で観察されたデータに基づく「現況のみ」の危険度評価を発表しています。使用データの量と質、不安定性の種類と空間的分布および時間的変化、事象の例外性、データを評価する人間の経験などの要素によって、情報の信頼度は変化します。発表される雪崩情報は、その信頼度を「high・moderate・low」で表現し、その理由も付記しています。また、この雪崩情報は、特定非営利法人日本雪崩ネットワークが発表する民間情報であり、気象庁から公報される「なだれ注意報」とは異なります。なお、欧米では、数日先までの予報を含む形態の雪崩情報が発表されていますが、日本では気象業務法に抵触することから、JANの雪崩情報は、現地で観察されたデータに基づく「現況のみ」の危険度評価を発表しています。
リンク(Link):気象庁(Japan Meteorological Agency)の「
なだれ注意報 "avalanche warning"
」
カナダでの雪崩情報 「
Avalanche Canada
」
雪崩の可能性・規模・分布から判断された5段階の危険度評価です。可能性・規模・分布の各要素は、さらに個別に段階区分された評価軸で判断されています。危険度は、定義付けられた用語などに基づく区分ですので、「低い(Low)」から「極めて高い(Extreme)」に向かって、雪崩危険度が直線的に上昇するわけではありません。具体的な危険要素は「留意すべき雪崩」や「概要」に記述されています。つまり、雪崩危険度区分は、山岳ユーザーが雪崩リスクを検討する際の入口の役割となります。また、危険度の右側にある矢印は、雪崩情報が発表された時点において危険度がどのような傾向にあるのかを示しています。右上の矢印であれば、「現在、危険度は上昇傾向にある」という意味となります。
区分の示す危険が、具体的にどのような雪崩によってもたらされるのかについての情報です。雪崩には、数日間で問題が解消へ向かうものから、数週間以上も誘発の可能性が持続するタイプまであります。よって、山岳域に存在する典型的な雪崩の種類を7区分し、問題の大きなものを掲載しています。また、それぞれの雪崩の種類について、それが存在する標高帯、方位、誘発の可能性、発生しうる規模などをイラストを使いつつ表現しています。
リンク(Link): 雪崩の種類(Avalanche Types, PDF)
雪崩の発生状況、積雪状態、気象について、それぞれフィールドで観察されたデータに基づくやや詳細な情報を記述しています。特に、雪崩の発生状況は重要な情報ですので、必ず確認するようにしてください。
リスクを軽減する行動を取って頂くためのアドバイスを簡潔に記述しています。雪崩情報は積雪の全体的な特徴を表現していますので、地形を見極め、それを上手に利用すること、また原則的な行動様式を用いることは、雪崩リスクの軽減に極めて重要です。
JANの雪崩情報で使用している雪崩危険度区分です。北米の雪崩情報の現場で働く実務者によって組織されたADFAR2委員会において検討・提案され、現在使用されているものと同一です。雪崩危険度区分の日本語化は、JANの雪崩情報に係る現場実務者および専門教育に係る人間によって検討され、決定しました。
リンク(Link): 雪崩危険度区分(Avalanche Dander Rating, PDF)
JANの雪崩情報で使用している雪崩規模の区分です。これは『気象・積雪・雪崩の観察と記録の���イドライン』に準拠しています。 走路の全長は目安であり、スラブの厚さなどから対象物が受けるダメージを考察し判断した区分です。中間の数値(1.5など)も使用します。
リンク(Link): 『気象・積雪・雪崩の観察と記録のガイドライン 2017』(OGRS)
規模 | 潜在的破壊力 | 質量・走路全長 |
---|---|---|
size 1 | 人間への危害はなし | 10t・10m |
size 2 | 人が埋まったり、怪我をしたり、死ぬ可能性あり | 10二乗t・100m |
size 3 | 車を埋めたり、壊したり、小規模な建物を破壊したり、木々を追ったりする可能性あり | 10三乗t・1000m |
size 4 | 列車や大きなトラック、数棟の建物あるいは4haの森林を破壊する可能性あり | 10四乗t・2000m |
size 5 | 知りうる限りの最大の雪崩。村や40haの森林の破壊する可能性あり | 10五乗t・3000m |
「アルパイン・森林限界・森林帯」の区分については、単純な標高だけでは区分できない面があります。例えば、白馬エリアでは標高1900~2200m付近が森林限界となりますが、八方尾根においてはスキー場上部がすぐにアルパインであることに注意してください。このような地域における特異な場所は、かぐら谷川武尊エリアでもあり、谷川岳がそれに相当します。森林限界のバンド帯が狭く、すぐにアルパイン扱いの場所となります。一方、妙高においては、アルパインの区分に相当するのは、火打山周辺のみとなります。
雪崩情報を上手に利用するには、知識も経験も必要です。JANの雪崩情報は、朝の時点での“現況”であり、予報ではありません。雪崩ハザードは降雪や気象状況で変化します。また、レクリーショナルの分野における雪崩死亡事故は、多くの場合、雪崩危険度が"警戒(Considerable)"の時に起こっていることを統計データは示しており、そのことを忘れないようにしてください。
リンク(Link): High Danger isn't High Risk.
もし、あなたが・・・
1)山の経験が浅く、まだ雪崩講習を受けたことがないのであれば・・・
2)山の経験はそれなりにあるが、適切な講習を受けたことがないのであれば・・・
3)雪上の雪崩講習会を受けたことがあり、山の経験も積みつつあるのなら・・・
4)ガイドなどプロフェッショナルならば・・・